IMG_20200517_153401
 はじめまして。普段はTwitterの住人、ShuN(@m800st)です。ふと思い立ってこの度ブログを始めてみることにしました。

 初投稿の今回は、初心者の方向けに万年筆の調整っていったい何してるの?という疑問を晴らしながら、自分でも調整に挑戦してみたいという方向けにDAISOで売られている万年筆をカンペキにしていこう、という趣旨の記事です。

 
 まずはじめに、ひとくちに“万年筆の調整”と言っても販売既にあった、もしくは使用時に生じてしまった狂いや乱れを“あるべき姿にする”要素と、メーカー標準の形状から自分に合った、または好みの形状に“変化させる”要素があります。
 そこで本記事では今回の(1)で“あるべき姿にする”パートとしてスリット調整とペン先の再セッティングを、次回の(2)で“変化させる”パートとしてスイートスポットを削りこむ調整をDAISO万を例にご紹介いたします。



※注意
本記事では広く調整について解説しますが個々の万年筆、事例によって必要な調整方法は全く異なる場合があります。
また本記事で扱うDAISO万年筆、その他万年筆に限らず今回の方法で万年筆が壊れた、希望通りの結果が得られなかった場合も本ブログは一切の責任を負いかねます。自己責任の上お試しください。



(1)スリット調整、ペン先の再セッティング
 
 今回必要なもの
・10~15倍程度のルーペ(各段階での確認用)
・0.5mm厚程度のゴム板や小さく切った自転車用チューブ等
・クリアファイルを小さく切ったもの

 (DAISO万の場合のみ使う)
・600番の耐水ペーパー(小さく切っておく)
・水と80℃程度のお湯
IMG_20200517_154340


 DAISO万は低価格の割に比較的しっかりとした構造なのが嬉しい万年筆ですが、個体差も大きく販売時ではペン先の左右に大きな段差ができている個体や、スリット(ペン先先端部の切れ込み)の幅が適切でないことによりインクの出が良すぎる、または悪すぎる個体も多く見受けられます。今回扱う個体も、ペン先の左右に大きな段差があり強くひっかかりを感じる状態でした。
IMG_20200517_153632IMG_20200517_153731


IMG_20200517_153555


 ペン先の状態を直すためにまずペン先とペン芯を抜きます。このとき、ペン先、ペン芯は固く挿入されている場合が多く、素手では余計な力が加わり破損させるなどのリスクがあるため摩擦を大きくし抜きやすくしてくれ、パーツの保護にもなるゴム板を使用してください。
IMG_20200517_154725



 次にスリット幅の調節とペン先の段差を解消します。一般的に金属製の隙間ゲージを使うことが多いですが、傷をつけるリスクが高いことと入手が大変なことから小さく切ったクリアファイルを使用します。スリットにクリアファイルを挟み奥に進めながら広げ、広がりすぎた場合にはファイルを外した状態で左右から閉じるようにペン先を押し先端部が僅かに離れているか離れていないか、という程度の幅を目指します。尚この幅が広いとインクの出は増え、狭いと少なくなります。またこのとき、ハート穴から先のどの地点の左右の高さも揃っている状態にしてください。
IMG_20200517_160953


 ここまでの調整でペン先の基本的な問題点は解消されるので、再セッティング…と言いたいところですがDAISO万の場合、ペン芯のバリ取りが甘い、またペン芯とペン先の傾斜が合っていないという特有の問題点があります。そこでここから先はDAISO万でのみ使える手法をご紹介します。

 写真の通りペン芯溝部分にバリが多く、これがペン先を押してしまうために段差が生じたりズレが起きやすくなったりする場合があります。そこで600番程度の耐水ペーパーで先端部7、8mm程度をバリを取りつつ軽く平面を作る程度に研磨します。このとき、特に先端部を削りすぎないよう注意します。均等に削れたら水洗いし削りくずを落とします。
IMG_20200517_154835
IMG_20200517_155647


 洗浄できたら、ペン芯とペン先を画像の位置程度を目安に合わせ首軸に押し込みます。このとき真っ直ぐにペン芯にペン先が乗るように気をつけてください。軽く固定する程度に一度差し込み、その後ゴム板を使い奥まで押し込むと良いでしょう。このときペン先を見ると、傾斜が合っていないペン芯が押してしまうためセッティング前よりもスリットが開いていることと思います。
IMG_20200517_161624


 そこで次に樹脂の熱可塑性を利用しペン芯をペン先に沿わせる作業を行います。沸かしたお湯にペン先を半分程度漬け、30秒~1分程度置きます。それでもスリットが開きすぎている場合は(熱いので気をつけながら)上部から多少押すなどしてください。(画像は湯通し前後の比較、下側の湯通し後は若干下を向いている)
IMG_20200517_162036IMG_20200517_163647


 スリットの開きが適切な状態になり、正面から見て左右が揃っていたらセッティングは完了です。繰り返しになりますが、ペン芯の研磨と湯通しは他の万年筆の場合通常不要な作業です。
IMG_20200517_162925IMG_20200517_164329




 前半の“あるべき姿にする”時点で、多くの万年筆で書き味に不具合を感じることはほとんどなくなりますので一度この時点で筆記してみるのが良いでしょう。
 しかしまだ不満が残る、ペン先研磨がしてみたいという場合は後半へ続く!!!