こんにちは。最近冷凍カットパインにはまっているShuN(@m800st)です。

 本日は万年筆の調整、と聞いてイメージする方が多いだろうヤスリを使ってペンポイントを自分に合わせて研磨し、より滑らかな書き味を得る方法をご紹介します。ひとくちに研磨と言っても様々な目的や狙いを持って行う場合があるのですが、今回は“スイートスポット”と呼ばれる自分の筆記角に合った面を作ることで長年使い込み馴染んだかのような書き味にする調整の解説です。
 
 今回に限らず研磨を伴う調整は、スリットやペンポイント段差の調整が前提になります。前回の(1)で解説した内容、特に段差の解消ができていない状態で研磨を始めると著しく万年筆状態を悪化させるので注意してください。また万年筆の研磨は不可逆的であり、立派な改造行為であることをお忘れなきよう。





※注意
本記事では広く調整について解説しますが個々の万年筆、事例によって必要な調整方法は全く異なる場合があります。
また本記事で扱うDAISO万年筆、その他万年筆に限らず今回の方法で万年筆が壊れた、希望通りの結果が得られなかった場合も本ブログは一切の責任を負いかねます。自己責任の上お試しください。





使うもの
・10~15倍程度のルーペ
・600番の耐水ペーパー
・2000番のラッピングフィルム(耐水ペーパーでも良いが、ラッピングフィルムを推奨)
・8000番のラッピングフィルム
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 大まかな手順は、筆記角に合った面の削り込み→丸め→内側のエッジの処理の3工程になります((1)完了していることは前提)。削り過ぎるともとには戻せませんので、こまめにルーペで状態を確認するのがポイントです。


 まず机に600番の耐水ペーパーを置き、その上で8の字を描きます。このときの角度が一番滑らかに筆記できる角度になりますので、いつもの机、いつもの位置で行うと良いでしょう。また耐水ペーパーの上ではあまり力を入れすぎず、わずかですが上下左右に捻るように余裕を持たせながら研磨すると尚良いです。慣れている場合は、逆回転や90°横にした形(インフィニティマーク)を交えてください。10回程度描く度にペン先をルーペで見て、減り具合と段差などが生じていないかを確認しましょう。画像の状態のように平面ができたら次の工程です。今回は8の字の正順、逆順、インフィニティの正順、逆順を各10回ずつ行いました。
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 このように角がはっきりと出た状態ではわずかな角度や持ち方の変化で引っかかりを感じたり、インクが出なくなったりします。そのため次は全体をなだらかな曲面でつなぐように研磨します。先程使った600番の耐水ペーパーを手に持ち、画像のようにペンポイントを撫でるようにしながら角を落としていきます。耐水ペーパーが当たり削れた部分は傷が付きますので、何度もルーペで確認しながら進めると良いでしょう。
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 カクカクした部分がすべてなくなったら、2000番のラッピングフィルム、8000番のラッピングフィルムに持ち替え順に磨いていきます。このとき2000番では600番で削った範囲より少し広い範囲を、8000番では2000番で削った範囲よりまた少し広い範囲を磨いていきます。全体的に光沢感が出て、つなぎ目に違和感がなくなったらこの工程は完了です。
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600番終了時
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2000番終了時
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8000番終了時


 この段階で、筆圧をかけずに紙の上を滑らせる分にはなめらかな状態になっていますが、筆圧をかけた場合、特に横に線を引く場合などでは引っかかりを強く感じるはずです。これはペンポイント内側の角が立ってしまっていることが原因です。そこでペン先を片側ずつ押し下げ、8000番のラッピングフィルムで撫でて角のみを落としていきます。角が立っている部分はラッピングフィルムが当たったときの感触でわかる場合が多いので、難しい工程ですが少しずつなめらかにしてあげましょう。このエッジを落とす作業はやりすぎると書き出しかすれやインクが出なくなることの原因になりますのでやりすぎは禁物です。2~3擦り毎に紙の上で引っかかりがなくなったか確認を繰り返しながら進め、最低限のみで留めることを意識してください。またペンポイントをずらすので、こまめに段差が発生していないかの確認もお忘れなく。引っかかりがなくなったらスイートスポット調整は完了です。
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 今回はどうしても万年筆の調整を体験したい、という方向けにまずはDAISO万年筆を自分に合わせて調整してみる、というテーマでその方法をご紹介しました。
 
 また手順などは万年筆や字幅によっても大きく異なります。またこの記事はお持ちの万年筆を自己調整することを推奨するものではなく、ここでの方法が適用できないケース、悪化させてしまうケースもあるのでご注意ください。

 大事な、貴重な、高級な万年筆は、とりあえず、まずはペンクリへ。